バウンダリー
カーテンコールおよびあとがき
あとがき




キービジュアル・ラフ



◆STAFF


原作:本郷あきよし「デジタルモンスター」より

(STUDIO RURAL)
著:Ryuto
イラスト:ENNE
アドバイザー:flyone

ロゴデザイン:ネットスター
ティザームービー:中村角煮、ネットスター






◆最後に。(サイト版あとがき)

この物語を構想を開始したのが、2013年初頭です。
『時空を超えた戦い』の終わりが見え始めた頃、次の連載をどうしようかと考えていた時に浮かんだのが、各アニメシリーズの主人公が対立し、「何が正義なのか」を問う話でした。
アニメシリーズでも各主人公の勢揃いが描かれ、クロスオーバーの展開自体が珍しくなくなった今、自分の書く作品は更にその一歩先の展開を想定してもいいのではないか。
つまり、英雄達自身が正しさを争う結果、読者側に「どちらが正しいのか?」を突き付けることをデジモンでやっても良いのではないか?
そんな発想が出発点でした。
また、もうひとつ重要だったのが、上記の世界観でありながら「特別な人の話にはしない」という点です。
アニメシリーズは、基本的に「普通の少年少女が一年かけて成長する」物語です。
ということは、一度完結した物語の主人公達は既にひとつの成長を終え、「特別な経験をした子供達」になってしまっています。
『時空〜』の時はその彼らの続きを書く、というコンセプトでしたが、今回はそうしたくはありませんでした。
むしろ、特別な人間達が英雄化し世界が壊れていく中、弱い奴らや特別でない奴らがどうするか、という話にしたかったのです。
かつて『時空〜』で「俺達の亡霊」みたいな存在として登場させた一人や、大好きな細田監督映画のキャラクターを絡めて「特別でない主人公」を作り上げることを考えたのもこの頃でした。

この構想が実際に物語にできるかもしれない、と考え始めたのが三月頃。
この頃に、中村角煮さんとネットスターさんから「夏くらいから三人同時に小説の新連載を始めないか」と持ちかけられました。
当初は『時空〜』がまだ終わるまで何話か掛ることと、私生活が色々と大変だったこともあり、「難しいかな」と答えていたのですが、
まぁこんな面白い企画に誘われたらどうしても乗りたくなってしまう訳で。

同時連載企画に参加し、この物語を五話ほどの構成にすると決めたのが四月初旬。
この時の仮タイトルは『デジモンオデッセイ』でした(既に最初から「オデッセイ感ねぇなぁ」と思ってたので、このタイトルではやらないことは最初から考えていましたが……)。
『無印』〜『クロスウォーズ』までのアニメ六作品と細田監督オリジナル劇場作品三作をクロスオーバーさせる。
主人公には『時空〜』の一人と『おおかみこども〜』の雪を使う。
角煮さんとネスタさんに作品概要を伝え、参加を希望しました。
ネスタさんの反応はとても渋いもので、角煮さんには「馬鹿じゃないの!?」と言われたことをここでぶっちゃけておきます。
(ちなみに角煮さんはこの時点で「『時かけ』ってどう絡めんのさ……絵か?」と指摘してきて、流石だなぁと思いました)

その後、四月からは物語の根幹の設定づくりを行いました。
どんな世界観で、主人公達はなぜ対立し、どう終わるのか?
というか、この内容で「特別でない主人公」をどう活躍させるのか?
そんなことを悩んでいた時に、思いついた(というか、夢で見た)のが、戦乱の中で少女がアルファモンに「戦争は嫌!」と叫んでいる姿でした。
『桐島、部活やめるってよ』のクライマックスのような、弱者と強者の立場が逆転する瞬間。
ラストはこれしかない、と思いました。
(手元のメモ帳だと、この時点で4月26日。『時空〜』完結の数週間前というギリギリなスケジュールです)

五月、(角煮さんにケツを叩かれて)『時空を超えた戦い』が完成。
そしてこの頃、ENNEさんとflyoneさんに作品への参加をお願いしました。
ENNEさんには『時空〜』の最終話とエピローグで既にイラストを描いて頂いたのですが、今回は本格的に、1話につき1〜2枚の挿絵を入れて頂きたいとお願いしました。
また設定が複雑であり、重いテーマを背負っている作品であるため、書くにあたり不自然な点や問題のある部分など無いかのアドバイスをflyoneさんに依頼しました。
(ちなみにこの頃、息抜きでナノモンの短編も同時に書いていました。頭カラッポな内容をよく同時に書けたなと思います……)

六月になり、『時空を超えた戦い』最終話投稿、完結。
そしてその翌日、ENNEさんと『時空〜』のまったりした打ち上げ(昼間に喫茶店で)をしながら、次回作の打ち合わせと「スタジオルラル」の立ち上げを話し合いました。
flyoneさんにも快諾を頂き、「スタジオルラル」が始動。
上旬のうちにタイトルが『バウンダリー』に決まり、執筆が始まりました。
この時点で投稿予定日である8月1日までは二か月を切り、七月上旬には正式告知も行いましたが、第一話執筆すら終わっておらず、「本当にできるのかこれ?」という状況。
そんな時届いたのが、上記のENNEさんによる『バウンダリー』キービジュアルのラフでした。
暗雲漂う景色に佇む一人と雪。
キービジュアルのアイディア出しをしていたのは僕でしたが、それでもこのラフを見た瞬間、「これならいける!」と思いました。
そのくらい、このイラストによるイメージの具現化は僕にとって大きなものでした。
七月中旬には初稿が完成、flyoneさんとの校正打ち合わせを行ったうえで、無事8月1日よりこの作品の連載が始まりました。

……とまぁ、こんな流れがありまして、この先は投稿している作品の通りです。
考えてみると、2013年は僕にとってこの作品を書くための一年だったと言っても過言ではないかもしれません。
単に作品完成までの期間だけでなく、作品の背景やテーマ、登場するキャラクターの言動に至るまで、何から何まで「2013年の時代性」を重視しました。
多分『時空〜』を書いた直後でなければこんな横暴なクロスオーバーを書くことはできなかった(というか、許されなかった)でしょうし、雪を主人公のひとりにすることもしなかったでしょう。
物語全体に漂う、ややアンニュイな終末観自体も震災以降のイメージ(第三話での一人の回想はそのイメージの典型)ですし、それをデジモン小説でやっても良い(と、少なくとも自分で判断できるようになった)のも最近のことです。
ただ、今の時代性を取り入れた物語ではありますが、作品のテーマそれ自体はどんな時代でも、あるいはどんな世代のファンが読んでも意味のあるものなのではないかと思います。
完全無欠のヒーローではなく、かつてヒーローだった奴らと、ヒーローじゃない奴らがもがき、ぶつかり合う。
そして最後には、辛うじてながらも希望的な未来を見る。
こう考えれば、誰にでも通じる、当たり前で普遍的なテーマになっていたのではないか? と、僕は思うのです。
『バウンダリー』が「この時期にこんな不思議なデジモン小説があった」と読者の方が思い出してくれるような、記憶に残る作品になってくれればいいなと思います。

最後に、改めて謝辞を贈りたいと思います。

ご多忙の中、僕の駄文には勿体ないくらいの美麗な挿し絵を描いて下さったENNEさん。
こんな狂った作品を設定から誤字脱字までチェックし、サポートして下さったflyoneさん。
「アイズリミックス」の著者、ネットスターさん。
「幾千のアポカリプス U.R.L」の著者、中村角煮さん。
さぎょいぷ他、何かと付き合わせてしまった蒼さん。

(社団)おおかみこどもの花の家の山崎正美様・和子様。
(社団)おおかみこどもの花の家・広島事務局の川端英徳様。

僕にデジモンという素晴らしい呪いをかけて下さった株式会社ウィズ様、株式会社バンダイ様、渡辺けんじ様、その他関係者様。
デジモン同様、映画という素晴らしい呪いをかけて下さった細田守監督。

物語に出演して下さったキャラクター達。

そして、いつの間にかここまで辿り着いたあなた。

本当に、本当にありがとうございました。





2014.1.31 Ryuto


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