時空を超えた戦い - Evo.2
早朝の逃走






「「なんだ…あれ!?」」

二人の目の前に突如現れたのは…平穏を破ったのは、人間の「ようで」あった。
ただ、身長が数十メートルもあることを除けば、であったが。

「あっ…こ、こっちに来るよ!」

ようやく我に帰った健良が言う。
啓人の方はまだポカンと前を見ていたが、やがで彼も状況に気づいた。
その間も巨大な人間は、こちらに向かって、今や誰一人いない公道を歩いてくる。
一歩踏み出すごとに地響きが聞こえた。

「な…なんなんだ?あれ…」
「アンギャアアアア!」

巨大な人間が叫ぶ。
…どう聞いても怪獣のようにしか聞こえなかった。

「しかも凶暴だし…」

巨人は啓人たちを踏み潰そうとする。
足が迫ってくるのに気づき、健良が叫ぶ。

「…逃げよう!」

落下してくる足を避け、四人は大急ぎで逃げ始めた。

「アンギャアアアア!」

それを見てようやく四人に気づいたのか、下を見た巨人は啓人たちを追い始めた。

「お、追って来る!」

そう言えば、熊は背を向けて逃げると追ってくるとか。
前を見ながらジリジリと下がった方がいいとか、テレビで言ってたっけ。
などと、健良は妙に冷静になりつつ考えた。
まぁ、今そんな事を考えたところで手遅れだが。

「仕方ない…。テリアモン!」
「うん、ジェン!!」

健良とテリアモンは足でブレーキをかけ、振り向きながら小型の機械…彼らがデジヴァイスと呼ぶ物を取り出す。
それを見た健良も止まり、ギルモンの方を向いた。
ギルモンは既に戦闘態勢に入っていた。

「ギルモン!」
「うん!」


【EVOLUTION_】
ギルモン進化!
テリアモン進化!

グラウモン!
ガルゴモン!


「いっくぞ〜〜!!」

ガルゴモンが腕のガトリング砲をカチャカチャと鳴らしながら構える。
その後ろで健良は奇妙なことに気づいた。

デジヴァイスに文字が出てきているのだ。


 "本宮 大輔"


「に、人間の名前…?」

デジヴァイスに表示されるのは通常デジモンのデータであり、人間(だと思うのだが)の名前が出てくることなど、
今まで見たことも無かった。

「一体…どういうことなんだ…」

健良は少し混乱していた。
何から何まで急すぎる。おかしい。
巨大な人間が現れて、しかもその人間の名前が自分のデジヴァイスに現れて…。
普段からデジモンと接している、という地点で普通の小学生と比べ相当おかしいのだろうが。
啓人も同じように混乱していた。

「でもなんで人間が!?」
「わからないけど…何かデジモンか、あるいはこれに関係してる人なんだろう…多分…」

啓人が言った「これ」とはデジヴァイスのことである。
実際、関係があるのだが、それはこの後の話、今の彼らが知るはずはない。

「でもなんでこんなにでっかいの?それになんでココに?」
「う〜ん…」

しかし、状況は彼らに考える暇など与えてくれないようだ。
「ダイスケ」という人間はこちらへまた向かってくる。
仕方ない、このままにしていても、あるいは逃げても確実に踏み潰される。
戦うしかない。相手は多分人間なので、正当防衛の範囲で、だが。

「ガトリングアーム!!」
「エキゾーストフレイム!!」

先手必勝、とばかり二体はダイスケに攻撃を仕掛ける。
二体の必殺技はダイスケに直撃した。

だが、彼らの攻撃でダイスケにダメージを与えることは出来なかった。

「…えっ」
「そんな…」
「アンギャアアアアアア!」

ダメージは受けていなくとも、今の攻撃で怒りが倍増したダイスケは、至近距離に入っている二体を蹴り飛ばす。

「「うわぁっ!」」

何メートルか吹っ飛ばされ、二体は退化してしまった。
とんでもないパワーだ。

「グルルル…」
「啓人!今はいったん退こう!」

勝てないと判断したジェンはテリアモンを起こし、逃げようとした。

「ま、待って!ギルモンが!」

啓人はギルモンが倒れている方に走る。

「タ、タカト…。」
「ギルモン、大丈夫?」

タカトはギルモンを起こし、逃げようとした。
が、彼らの周りが影に覆われた。
2人の真上にはダイスケの足が迫っている。

「う、わ…」
「あ、危ない!」

健良が叫ぶと同時に、ズシンという音とともに足は彼らの上に落ちた。

「啓人ッ!」
「アンギャアアア!」



戦慄で固まる健良。
まさか、まさか…。


しかし、よく見ると足は微妙に浮いていることに気づく。

足の下からは…声が聞こえる。
よく聞いたことのある声。

「僕は…」
「た、啓人!?」
「僕は、僕は死にまっせーんっ!」
「…」

啓人がこの状況で、某ドラマのモノマネをしたのを聞き、健良は安心したような、呆れたような微妙な顔をした。
啓人とギルモンは踏み潰される寸前に、デジモンカード『ブレイブシールド』のカードをデジヴァイスにスラッシュしていた。

彼らのデジヴァイスはカードを通すことで物を具現化し、自らのパートナーに力を与えることが出来る。
彼らは盾をつっかえ棒にしてシールドの隙間に入ることで奇跡的に回避していた。

「し、死ぬかと思った…」

啓人自身、この作戦が成功すると思っていなかったのか、ポカンとしながら呟いた。
が、いつまでもそうしてはいられない。
シールドはメキメキと音を立てている。

「カードスラッシュ!高速プラグインB!」

啓人は次のカードを使い、ギルモンの能力をアップさせると、ギルモンにつかまった。

「くっ!」

ギルモンが猛スピードで足の下を抜ける。
間一髪、次の瞬間にブレイブシールドは押し潰された。


「ホッ…」

健良が息をつく。

「危なかった…」
「啓人、さぁ、早く逃げよう!」



抜け出した4人は全速力で走り出した。

「アンギャアアアア!」

巨大ダイスケは再び追ってきた。
地響きで転びそうになるのを踏ん張り、四人は逃げる。

「「逃げろっ!」」





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