時空を超えた戦い - Evo.11
解放、そして─




「まだ戦う気か?」
「…貴様ぁ…」

瓦礫の中からデスモンが現れる。
体の所々に傷は負っているものの、ベルゼブモンの必殺技は致命傷にはならなかったようだ。
デスモンはベルゼブモンを睨んだ。

「戦う気か、だと…?俺はその為にこの世界に降りた。テメェ如きの攻撃で戦意を喪失などしない」
「そうかよ…なら、今度こそ戦えなくなるまでコイツを喰らわしてやる」
「この…人間に味方するデジモンの分際で…!」

スカルサタモンがベルゼブモンの言葉に憤慨した。
一対二…だが、今やダメージの蓄積はデスモンの方が多いし、スカルサタモンは完全体だ。
ベルゼブモンに勝算は十分あった。
だが、地上で戦いを中断させるに十分な事件が起る。

「ん…」

巨大ダイスケの首から、見たことも無いような巨大な「種」。
そこから現れた不気味な触手が、メガログラウモンを絡め取ったのだ。

「!何だ、ありゃあ…!?」
「あれは…」

ベルゼブモンも、デスモン、スカルサタモンもその戦闘を見た。

「デスモン様…」
「驚きだな…アレが、『あの方』が埋め込んだ『種』か」

デスモンがその状況を見ながら呟いた。
その言葉に反応したのはベルゼブモン。

「『あの方』…?」
「俺たちの主だ」

デスモンは隠すことも無くそう答えた。

「主だと…まさか…!?」

ベルゼブモンの脳裏に浮かんだのは、デジタルワールドを支配する四体の『神』。
まさか、またしてもデジタルワールドからリアルワールドへデジモンを送り込んだのだろうか?
だが、それを口にする前に、デスモンは否定した。

「恐らく、貴様の考えている者たちではない。だが、『あの方』は、間も無くそいつらと取って代わるだろう」

そして不敵な笑い声を上げる。
その様子を見ながら、ベルゼブモンは無表情に銃を構えた。
もはや話すことは何も無い。
コイツは、とっとと倒すべき敵だ。
だが。

「「「!!」」」

次の瞬間、凄まじい光が品川全体を覆う。
メガログラウモンの必殺技が、邪念の種を破壊したのだ。
デスモンが巨大な眼を更に見開いた。

「何だと…馬鹿な!」
「…やりゃあ出来るじゃねぇか…」

一方でベルゼブモンはニヤリと笑った。



「やったぞ…みんな…」

鎮宇も、戦いの決着を自衛隊作戦室から見ていた。

「…流石だな…デジモンと人間の力、か…」
「や、山木、あれは…?」

山木は煙草を口にくわえ、静かに呟いた。
一方の成田は、何が起こったのかさっぱり、と言った感じである。

光の中に新たな変化が起こった。
子供たち、そしてデジモンたちが、光の中をゆっくりと、デジタル空間に向かって上っていく。
まるで何かに持ち上げられているようだ。
そして、彼らに向けられた『声』がもう一度、その場に響く。


 『よくやってくれた…そして、君たちにもう一度、お礼を言おう』


「この声は…彼らへの声か」
「山木君、彼らは大丈夫だよ」

鎮宇が山木に言った。
光でよくは見えないが、少なくとも子供たちは逃げようとする様子はない。
彼らの意思でそこへ向かっているようだ。

「…もう、何が起きても驚かねぇな」

成田がポカンとした表情のまま、言った。



「ん…」

啓人は目を開けた。
体がデジタル空間を目指し上昇していく内に、光はますます強くなり、やがて目も開けていられない状況であった。
だが暫くすると光の強さも収まり、目を開けられる程の光度となった。
自分たちの周りは今、白一色である。
何もない世界──そう言えば適切だろうか。
いずれにせよ、此処がデジタル空間の裂け目の先にある世界なのだろう。

「ようやく、会うことが出来たね…」
「…あ」

そこに居たのは、若い男性。
白い服で身を包んだ、どこか自分たちの世界に住む人々とは違う雰囲気の人間だった。

「あなたが…」
「君たちの考えている通りだよ」

彼の声と、先程聞こえた『声』は一致していた。
白い服装の男性は言葉を続ける。

「私の名はゲンナイだ」

自ら名前を明かした男性。

「私は、君たちの世界とはまた別の世界…そこのデジタルワールドの住人だ。システムの一部とでも言おうか」
「え…人間じゃ、ない…?」

啓人が驚く。
確かに先程から別の世界(つまり啓人たちの世界)に言葉を送ったり、自分たちをこのデジタル空間の裂け目に連れて来たりと、只者ではないと思っていたのだが。
あまりに突飛で予想外の一言。

「…はは、流石に信じられないか?」
「い、いえ…」
「信じられないというか…」
「ありそうだけど…う〜ん…」

全員が困惑した反応。
だが、ゲンナイはカラカラと笑って。

「まぁ、君たちがどう考えてもいい。今話題にすべきはそこでは無いのだから」

…いいんですか、自分の素性をないがしろにして?
子供たち全員がそんな疑問を持ったが、今はそれよりも聞きたい、そして理解したいことがある…気がする。

突然、ゲンナイが改まった表情で子供たちに顔を向けた。

「君たちの協力が無くては、彼は邪念の種に捕まったままだっただろう…本当にありがとう」

ゲンナイが頭を下げた。

「い、いえ、そんな…」

健良が慌てる。

「僕たちは、自分たちの判断で行動しただけなんです。それに…」

そう続けようとした所で、再び辺りに光が集まる。

「うわっ…」
「な、何?何なの?」

光は彼らの前で収束すると、やがて形となっていく。
そして輝きが収まると…そこには、一人の少年が倒れていた。
その少年とは…。

「「「う、うわあぁぁっ!?」」」
「だ、ダイスケだ!」
「落ち着いてくれ。彼はようやく邪念の種から解放されたのだから」

倒れている少年、『本宮 大輔』はもう醜悪な巨大ダイスケではない。
背丈も姿も、自分たちと同じくらいの、普通の少年である。
ゲンナイの言葉で子供たちは静かになったのだが、間もなく啓人は別の問題点に気がつく。

「ね、ねぇ…。無事、なんだよね…」
「…」

もしかして、さっきのメガログラウモンの攻撃で命を…。
そんなことを考えると気が気ではない。
その質問に対し、子供たちは言葉に詰まる。
が。

「Zzz…」
「「「あ…」」」

大輔の寝息が辺りに響いた。
一同が唖然となる。

「さっきの戦いで体力を失っただけだよ。暫くすれば起きるだろう」
「はぁ…」

ゲンナイは大輔の様子について説明すると、話題を本来の物に戻した。

「さて、どこまで話したかな?」

そんな風な言葉を話すゲンナイは、若い男なのにどこかお爺さんのような雰囲気もあった。

「あの…彼を操っていた『邪悪な者』とは…一体?」

健良が聞く。

「そうだったな…それを話すには、まずあちらの世界で起こった事件から話さねば」

そしてゲンナイは語り始めた。

「発端はデジタルワールドで起こった事件だ──」


つい最近の出来事。
現実世界の時間に換算して、僅か1ヶ月、いや、2、3週間前か。
デジタルワールドの各地で組織的な破壊活動が行われた。
それらの破壊活動は全て、同一の組織によって行われていた。
この事態を収拾すべく、ゲンナイやデジタルワールドのデジモンたちは出現した「姿無き敵」の調査をしていた。

その調査の際、ゲンナイたちと共にデジタルワールドに降り立ったのが「選ばれし子供たち」である。
デジタルワールドから選ばれた子供たち。
彼らもまた、それぞれがパートナーデジモンを持つ者たちであり、かつてデジタルワールドと現実世界を救った経験があった。
その中の一人が、本宮 大輔。
啓人たちと同じく、11歳の、デジタルモンスターと関わる以外は普通の少年。
その彼が、突然消息を断った。

それは突然の事件で、他の選ばれし子供は困惑して彼を探したが、見つからなかった。
数日後、彼は以外な場所で確認された──『敵』に操られている大輔を。
それが、啓人たちの世界──即ち、別次元。
彼らとは全く住む場所の違う、けれども概観や様子はとてもよく似た世界。
図らずもゲンナイの仲間の一人が、デジタルワールドの狭間の調査中に発見したのだ。

それから数日後、不安定なゲートが開かれた。
既に敵は新たな計画に向け動き出していて、猶予は無かった。
ゲンナイの力だけでは、大輔を救い出すのは難しい、それが現実だったのだが。
しかし、彼は解放された──意外な子供たちの協力で。

「──それが、君たちだよ」

ゲンナイが微笑む。

「そんなことが…」
「じゃあ、『邪念の種』を埋め込んだやつが、ゲンナイさんたちの世界で暴れているってコトですか?」

博和が聞く。

「そういう事だよ」

ゲンナイが答えた。

「許せないな、ヒロカズ…」
「全くだ…タチが悪いぜ」

その時、だった。

「う、う〜…」
「「「!!」」」

大輔が動いた。

「大丈夫か?」

ゲンナイが近づき、聞く。
大輔はゆっくりと目を開け、あたりを見回した。

「あれ…ゲンナイ…さん?」
「起き上がれるかい?」
「起き上がれるか、って、何が…イダダダダ!!」

大輔が突然叫んだ。

「痛ッ!なんだ、体中がいてぇ!」
「あぁ、やはりか…」
「な、何なんすか、『やはり』って!?肩が、肩がイデェ!!」

大輔が悶絶しながら体を動かすのだが、その動きが体のあらゆる箇所に新たな痛みを作り出す。

「あー…」
「ゲンナイさんの言う『起きる』って、こういうことだったのね…」

啓人と樹莉が納得して頷く。
その見慣れない人物の同意するような反応に、大輔が苦しみながら疑問を持った。

「だ、誰だよオマエら?っていうかココどこだ?イデッ!今度は腿が!」
「う〜ん…何と説明すればいいのかな…?」
「どうするの、ゲンナイさん?」
「う〜む…仕方無い、最初からもう一度話そうか」

どうやら記憶が曖昧になっているらしい大輔に、ゲンナイはたった今話したこれまでの経緯を話す。
もちろん、今度はこちらの世界で起こった事件も含めて。

話が進むにつれ、大輔の顔はみるみる蒼白になっていった。
それも当然か。
何せ操られていたとは言え、自分のせいでそれはもう恐ろしいことが起きてしまったのだから。
話を聞き終わると、口を開けてから数秒後にようやく言葉が出てきた。

「そ、それ…や、やばくないか…あ、あんまりにも…」
「確かに被害があったのは事実だか…それでも、死者は出なかった訳だし…」
「うん…出なかったし、それに〜…」

健良とゲンナイが必死に『大したこと無かった』というような口調で話したのだが、大輔にとってはそれも無意味だった。

「ほ、本当に申し訳ねぇ!!」

啓人たちの目の前で土下座をする大輔。

「ちょ、ちょっと!」
「何もそこまでしなくても…」
「いや、本当ならココで切腹しなきゃいけねぇくらいの問題だ!本当にすまねぇ!!」

頭を下げて、ひたすら謝る大輔。
健良たちは困惑するだけだった。

「ほら、もう頭を上げなさい」

ゲンナイが諭すが、大輔は動かなかった。

「すみませんでした…本当に…」
「もういいから…起きなさいよ」
「そ、そうだぜ!大体悪いのはオマエを操ってたっていう、そのデジモンだろ?」
「博和の言うとおりだよ…ほら、大輔、もう頭を上げて…」

啓人がそう言いながら近づく。
見ると、大輔は土下座の格好のまま全く動かない訳ではなく、わなわなと震えていた。

「…大輔?」
「くっそぉ!誰だ、そのクソ野郎はぁ!!」

ごすっ!

「「☆”&▼┷●@∴*♂$♪ゐ★!!?」」

突然操られたことに対する怒りを噴出しながら大輔は頭を上げた。
その勢いが良すぎて、啓人が反応する前に彼の後頭部は啓人の顎を直撃。
両者、目から火花を散らしつつ悶絶して倒れこんだ。

「(何やってんだよ一体…)」

全員、心の中で冷たくツッコんだ。
しばらくして頭を抑えながら大輔が起き上がる。

「と、とにかく…その激悪野郎め、俺が必ずしばいてやっからなぁ…」

切り替えが早いと言うか、浮き沈みが激しいと言うか。

「(いるよな〜、クラスにこんな奴、一人は)」
「(…それ、自分のことでしょ、博和)」

ひそひそと関係無い話をする博和と健太であった。
一方でゲンナイは大輔に話す。

「うむ、確かに君の力は『邪悪なる者』を倒すため不可欠だ。出来るだけ早く、あちらの世界に…」

ここで言葉を止める。
突然、小さなデジタル空間がその場に出現したのだ。
それは啓人たちよりも少しばかり高いところで、ゆっくりと開いていく。
今度は何だ!?と取り乱す健太たち。
啓人と大輔がそこを見ると。

「「あ」」

そこから、一体のデジモンが落ちてきた。
青い体を持ち、体の大きさはテリアモンとそれほど変わらない。
額にはVの字を持つ、とても小さな竜のようなデジモン。

「ブイモン!」

最初に名前を呼んだのは、彼のパートナーだった。

「うわ〜!ダイスケ〜!会いたかったよぉ〜!!」
「悪い!心配させちまったな…ブイモン」

ダイスケに飛びついて喜ぶブイモン。

「やれやれ…ついて来ていたのか…やはり」
「ヘヘ〜、ごめんなさ〜い」

ゲンナイが呆れたと言うような動作をする。
ココに来るまでに何者かが付いて来ていたことには気づいていたのだが。
勘が見事に的中していた。

「すげぇ!ブイモンじゃん!」
「うわぁ、初めて見た!」
「希少種なんでしょ!大輔ってスゴイのがパートナーなんだね!」

そして、そのブイモンを見て興奮する啓人、博和、健太。
結局、大輔がブイモンを紹介したり、博和と健太がやたらとブイモンに触りたがったり、それを見たマリンエンジェモンが少しジェラシーに入ったりして。
再び全員が落ち着くまでに5分ほど掛かった。

「…では、私たちは元の世界へ戻ろう。本当に君たちには感謝しているよ」

そう言って、別れを告げようとするゲンナイ。
だが、啓人とギルモンが彼の前に立った。

「待ってください、ゲンナイさん!」
「…?」
「僕とギルモンも、あなたたちを手伝います!」

一瞬、ゲンナイが固まった。

「…は?」
「僕たちも、あなたたちの次元へ連れて行ってください!」
「お、おい…」

大輔が言った。

「意味分かって言ってるのか?戦いなんだぞ?」
「分かってる。だからこそ言ってるんだ」
「ギルモンもタカトも、同じ考えだよ」

ギルモンと啓人が答えた。

「危険だぜ。それに、ついさっき助けてもらったばかりなんだ。これ以上迷惑かけるわけには…」
「危険なら、今までに経験してるよ」
「それに、ギルモンたち迷惑なんかかかってないよ。もちろん、これからもね」
「…どうするんすか、ゲンナイさん」
「う〜む…」

唸るゲンナイ。
腕を組んで考えている。
だが。

「啓人だけ抜け駆けはいけねぇぜ」
「ヒロカズの言うとーり!」
「戦いには防御担当も必要だと思うけど?」
「ぱぴー!」

博和、ガードロモン、健太、そしてマリンエンジェモン。
彼らまで参加することを進言してきた。

「ちょ、ちょっと…」
「じゃ、私は応援担当ね」
「か、加藤さんまで?」
「戦いは出来ないけど…それでもいい?」
「タカトはジュリがいたら無敵だよ〜」
「ぎ、ギルモン…」

話がゲンナイや大輔を無視し、どんどん進んでいく。

「アンタたち、啓人だけじゃ心細いでしょ?私たちも行くわよ、レナモン!」
「留姫が決めたのなら、私はそれに従うだけだ」
「る、留姫まで…」
「あ〜…なんでそうなるのかなぁ…」

大輔が呟くが、更に止めとばかり、健良が進み出て。

「これが、僕たちの判断です、ゲンナイさん。それに、僕とテリアモンも行くつもりです」
「さすが、じぇ〜ん!」
「お願いです、ゲンナイさん。僕たちだって、そのデジモンのことが許せないんです」

ゲンナイは相変わらず腕を組んで厳しい顔をしていたが、もはや彼らが梃子でも動かないことは明らかだった。

「…命の保障は出来ない」
「承知の上です」
「…分かった、君たちの力を借してもらうよ」
「「「…やった!!」」」

協力が出来ることに喜ぶ子供たち。

「だが、一晩待ってくれ。親御さんにも了承してもらう必要があるだろうから。出発は明日の朝、だ」
「わかりました」
「嘘だったりしないでしょうね?」
「おいおい、疑うのは止してくれ」
「はは、留姫は慎重だね」
「じゃあ、私と大輔君は…」

と言って、大輔の方を振り向くと。
そこに大輔はいない。

「いや、なんか捕まってるんすけど…」

前を見ると、何故かそこには博和たちに羽交い絞めにされた大輔とブイモンが。

「このまま二人が帰って、ゲートが閉じられたらたまったもんじゃ無いからな。二人とも、明日まで残ってくれよ」
「おい!それってつまり人質じゃねーか!」
「ま、そうとも言い換えられるかな」
「連れて行くって決めたんだからな。これくらい当然だろ?」
「だ、ダイスケ〜!」

やっぱり、恨んでるんじゃないか、お前ら?
そう思ってしまう大輔だった。
だが、そんな時に限ってゲンナイは。

「…まぁ、そう思われるのも当然か…二人とも、残ってくれないか」
「げ、ゲンナイさんまで〜!」
「よ〜し、決定〜!」

迷惑ムード満点な大輔だったが、次の啓人の言葉で彼の気分は一変する。

「じゃあ、僕ん家に泊まっていきなよ。パン屋なんだ、うち」
「!!マジでか、おい!」
「朝ご飯はパン食べ放題だよ〜」
「よっしゃあ!俺、カレーパンがいい!」
「うわ〜!ダイスケ、俺チョココロネ!いいよね?ね!」

なんだか、話が妙な方向に進んでいるが。
ここでゲンナイが大きく咳払いし、全員の注目を集めた。

「話はまとまった、という事でいいかな?」
「「「は〜い!」」」
「では、明日の朝、午前八時集合だ。時間厳守だ、遅れたら本当に置いて行くぞ」

大輔が「マジっすか〜」と叫び、周りの笑いを誘った。
やがて、周りの光が消えていき、何時の間にか、戦いのあった街の中に立っていた。



「何てことを…!?」

デスモンが驚愕した。
その理由は当然。
あの子供が、不可能と思われた『邪念の種』の破壊によって解放されてしまった。

「見たか、目玉野郎。これが結末だよ」

ベルゼブモンが言った。

「てめぇらの負けだ」
「…」

デスモンとスカルサタモンが戦場を見た。
やがて。

「撤退だ」
「了解」

スカルサタモンがゲートを開く。
デスモン、そしてスカルサタモンが、ゲートの中に入ろうとした。

「行かせる…」

ベルゼブモンが陽電子砲を向けようとしたが、腕が痛み、顔を顰める。
そんな事をしている間にも、デスモンたちの姿は消え、ゲートは閉じてしまった。

「…ち」

ベルゼブモンがその様子を見て舌を打ったが、顔にはやがて笑みが現れた。
戦場となった街の様子を見渡し、呟く。

「おい、勝ったぜ、バカヤロー…」



「…勝った、のか?」

成田がポカンとしながら聞く。

「それは自分で判断しろ」

山木の言葉。
歓声を上げ、ハイタッチをする子供たちとデジモンたちが作戦室からも見えた。

「…」
「成田さん」

鎮宇が成田に言葉をかけた。

「…な、何ですか?」
「後ろを見てください」

成田が振り向くと、そこには自分の顔を見つめる部下たちの姿。
…あぁ、そうか。
自分にはまだ、指令担当としての仕事が残っていた。
成田の顔はやがて緩んでいき、そして、指令としての最後の一言。

「…状況、終了」

作戦室に、歓声、そして拍手が湧き上がった。









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