時空を超えた戦い - Evo.28
Sacrifice(Break or Wake mix) -2-







仮面の悪魔の冷たい笑い声が辺りに響いた。
勝ったのだ。彼は勝利した。
シナリオは完遂された…。





「…嘘だ…!」

赤い、半透明のエネルギー越しにその光景を見ていたものは、一人残らず絶句した。
全員の心情をタケルが代弁しただけだった。
あの三体が負けた。
太一とヤマトは必死に自分のパートナーに声をかけている。
大輔と賢はうずくまっている。
オメガモンは倒れた。
デュークモンは膝を折った。
インペリアルドラモンは凍った。

「そんな筈は…まだ…まだ何か…」
「まだ勝利を望んでいるのかね?希望を?」

健良の呟きに対し、余韻に浸る悪魔は、彼らを見ずに──代わりに、敗北したデジモン達を満足そうに鑑賞している──言った。

「いい加減諦めたらどうだね?君達は負けた。まもなく私達はここを発ち、全てが終わる。君達は…外で戦っている保安部隊に助けられるだろう。まぁ、たった今倒れた彼らは、その前に消さなければならないが。それで充分ではないかな?」
「…っ」

健良は自分を制御した。
落ち着け。奴はそうやって、あの三体に勝ったのだ。
冷静さを欠いては、まだ僅かに残っている──少なくとも、彼らは全員そう信じている──希望を摘むことになる。
だが、どうすれば…。
オメガモンはいない。
インペリアルドラモンもいない。デュークモンもいない。
彼らのテイマーも無力だ…。
彼らには頼れない。今はいけない。
だが、この場で自分達は何も出来ない…。
他に頼れるものなど…。


「…いや…います…」

それに最初に気づいたのは光子郎だった。
そして一秒遅れて、健良とタケル、空も気づいた。
まだ、“頼れる”存在はいる。

一つは中に。もう一つは外に。

光子郎はすぐに、デジヴァイスにダウンロードされているホログラムを取り出した。
今は別の場所を見ているジョーカモンに気づかれないように。
それは前に全員で行った会合で見せたのと同じもの、この辺り一帯の見取り図だ。
これには、互いの場所を知らせてくれるような、都合の良い目印は存在しない。
だが、何とかなる。
光子郎は空を見た。そして彼女が同じことを考えていることを確信すると…ただ頷いた。
空はすぐに携帯電話を取り出した。ここで通じるかどうかはまだ試してないが…。
頼む。

ガルダモンの腕の中に隠れ、暫く携帯を手放さずに待つと…幸運なことに、その声が聞こえた。

“あっ、空さんですか!?どうしたんですか!?ここにいる間はケータイ使わないって…”
「しっ!静かにしてっ!今から言う話を聞き逃さないで…」

けたたましい京の声を制し、空が必死に冷静な声を保ち、用件を告げた。
確かにこの場所では、傍受の可能性がある通信を極力避けていたが…今はもう些細な問題だ。
迅速に、そのプランを告げた。唯一の希望を。

だが、ジョーカモンの仮面の奥…狂気の光を持つ瞳は、彼らを見た。

「何を…しているのかね?」

フッ、という音が響き、紅色のカーテンが消えた。
だが、“観客”はジョーカモンをにらみ返すだけだった。
用件は全て伝わったのだ。





「はぁ!!?デスモンはどうするんだよ!?」
「今は時間が無いの!!確かに危険だけど、やるしかない!!」
「けどなぁ…」
「いーから!!」

切迫した表情の京が、アクィラモンの背からベルゼブモンに叫んでいた。
空の口から告げられた、唯一の光明。
それは短い指示だった。



“お願い、今から中央司令室に向かって!そこに入って、コンピュータを操作するの。そこに必ず、凍結保存されているブレイズ7を解凍するプログラムがあるから、それを起動して!”



これは考えようによっては、非常に奇妙な“お願い”であった。
凍結されているのは、いわば敵である…自分達の知る限り、キングエテモンを除けば。
だが、解凍するのは全てのデジモンらしい。
更に今、彼らは大将と刃を交えている。
具体的に何があったのかは分からない。
そんな状況で、何よりも優先してやらねばならないという“仕事”。
それをすれば、彼らは救われる(少なくとも、そんなニュアンスだった…気がする)らしい。

詳しいことを聞くのはやめた。
そんなことは、後でもできる。

そしてゴッドドラモンや他のデジモンは、中央司令室はおろかここまで来ることすら出来ない。
ならば、自分達しか出来ない。手が空いてないとしても。

「同じ危険でも、デスモンはみんなを狙ってないだけマシだよ!」
「ベルゼブモン!お願い!」

京の意見に同調した丈や樹莉も、ベルゼブモンに声をかける。
都合の良いことに、目の前には二つの分かれ道が現れ、デスモンは右側の通路へ向かった。
左側は…確か、中央司令室に向かう通路だ。
ベルゼブモンは舌打ちした。
自分の理解できない都合で話が進んでいるのは、あまり面白いことではない。

「仕方ねぇ!遅れんなよ!!分かったな!!」

そう叫びながら、ベルゼブモンは左へ急カーブした。
エビドラモン、リリモン、アクィラモンがそれに続く。

全く、近頃は何もかも予想通りに行かない。





ジョーカモンの得意技であるレッド・モノリスは、言うなれば遠方に配置できるバリアだ。
これは他の技によるエネルギーを吸収し、内部で分解する。
ただし、全てを跳ね返し、爆散させるような強力な防御力は持たない。
代わりに好きな位置に配置することによって、絶対に通過できないバリケードとすることができる。
そして同じように、好きな時に取り除ける。
ジョーカモンはバリケードを取り除くと、両刃の鎌を閃かせて一気に子供達へ向かった。
彼らを放置するのは何も行動を起こさないことを前提としていた。
余計なことを起こそうとする人質は、やはり殺さなければならないだろう。
誰の首を刎ねても良い。一人でも死ねば、周りの子供は恐れ戦き、行動を起こす気など失う。
彼はそう考えていた。

辺りに散らばる氷の破片、その全てがはっきりと目で捕らえられない程のスピードで、悪魔は飛んだ。
前にデジモンが出てくる。それは、まあ、いい。
大方、完全体レベルだ。
彼は自分と同レベルのデジモンには負ける訳がない、そう考えていた。
そして先程考えたように、殺すのは誰でも構わない。
デジモンでも。
よって、前に出たデジモンが、その中でも一番小さい、二体の成長期であることを認識した時、彼は笑いの衝動を抑えなくてはならなかった。
ここまで愚かだと、笑いたくもなる。

だが、そこで彼の目の前に光が広がった。
進化の光。それは二人のニンゲンが握る、デジヴァイスから放たれている…。
それが何を意味するのかを理解する前に、光は収束され、二つのシルエットが現れた。
それと、大量のミサイルが。

ジョーカモンはとっさに、回避するルートを選んで飛んだ。
ミサイル同士が激突し、そこら中で爆発する。
どうしても回避できないミサイルは、直接鎌で切り捨てた。
黒煙と赤い火花が溢れ、周りを覆う。
小賢しい…自分は無傷だ、所詮数だけの攻撃など…。
だが、無傷だったのは“ミサイルに対して”であった。
同時に飛んできた輝く管狐が、彼の肩を切り裂いた。

「…」

黒煙が消えた時、ジョーカモンは漸くその姿を見た。
巨大な緑色のマシーン型…そして、金色の神人型デジモン。
まず、はっきりと分かることは…彼らは究極体であること、そしてデュークモンと同じように、テイマーと融合して進化を果たしたことだ。

「あれ、どーしたのかな?あとはもう雑魚ばっかりだとか、そう思ってた?」

巨大な機械デジモンが得意そうに言う。

“セントガルゴモン、余計な話はするな。僕らはやるべきことをするだけだよ”
“なら、無駄話はしてもいいと思うけど。私達は時間稼ぎをすればいいんだから”

金色のデジモン…の、パートナーの声?が言った。
そして二体は構える。

「…成る程、分かった。ないがしろにしたのは申し訳なかった。改めて、最大限の敬意を持ち…君らを殺すとしよう」

ジョーカモンは両腕を武器に──右腕をイージス、左腕をグレイソードに──変え、飛んだ。
同時に、二体の究極体も。





部屋全体が防護壁で強化されたコンソールと言ってもいい、中央司令室の扉は、ゴッドドラモンに占領された第三司令室の扉と殆ど同じように吹き飛ばされた。
尤も、これを破壊したのは技の類ではなく、エビドラモン自身の突進によってだったが。
次に部屋の中に入ったのは、銃を構えるベルゼブモンと子供達。
ベルゼブモンは、侵入者に対処しようとする何体かの衛兵をいとも簡単に殴り倒すと、唖然としている残りの司令官達にニヤッと笑いかけた。

「ちわーす、三河屋でーす」
「貴様ら、どうやって此処に…」

恐らくこのスカルサタモンは、デジタル空間の外延部から進入不可能になっている筈のオルガノ・ガードのことを言いたかったのだろうが、ベルゼブモンに銃を向けられると黙り込んだ。

「悪いが、そこを退いてくれ。要があってそこの機械を使いたいんだよ」
「…ッ、そんなことを…」

彼はそんなことは出来ない、と言いたかったのだろうが、今度はベレンヘーナを使って威嚇射撃をされ、再び黙り込んだ。

「オラ、全員壁際に寄れ!手ェ上げてテキトーに固まってろ!!」

ベルゼブモンが手を振り、部屋にいる士官全員を壁に寄らせる。
その中で最も大柄なスカルサタモンは愚かにも抵抗を試みた…が、彼が杖を振り上げようとした瞬間、頭のある位置の数センチ右上の壁に、綺麗な穴が空いた。
彼の前には、両手を花の砲身へと変えたリリモンがいた。
無邪気で魅力的な笑顔を見せてはいるが、その額にはうっすらとY字路が盛り上がっている。

「今、忙しいの。動かないでくれる?」
「…は、はい」

全員が壁に寄らない内に、子供達とパートナーデジモンはコンソールに向かっていた。
部屋は巨大で、この中で最も身体の大きいアクィラモンでさえ簡単に入る。
京は先程まで通信士官が座っていた椅子に腰を掛けた。
対するは、自宅にあるパソコンよりも遥かに巨大なキーパッド。

「ミミお姉さま、ケータイお願いしますね。よーっし、京様の活躍をとくとご覧あれ!!」

念のため光子郎に繋いでいる携帯電話をミミに頼み、得意気に──ギャラリーが付いている状態で自分の特技を披露するのは、誰でも楽しいものだ──“構え”を取ったが…一秒後にはもう頭が硬直していた。
理由は簡単。
キーにも、表示画面にも、日本語は一つもない。
全てデジモン文字だ。
残念ながら、彼女は何も手がかりなしでその文字列を読めるほどの天才ではない。

「ちょ、ちょっと!誰でもいいからこの文字読める人いない!?」
「はい、私が」

その声に答えたのは、彼女のパートナーだ。

「しかし、一つだけ問題が」
「え!?何!?」
「私は“人”ではなく、巨鳥型デジモンです」
「いいから早く来て!!」





爆発音が鳴り響く度に、ジョーカモンは下がる。
豪快なミサイル音は、強力な武器を備えたジョーカモンを近寄らせなかった。
彼はこれまで、ミサイルが誘爆するのはセントガルゴモンのミスだと考えていたが…それが違うことにやっと気づいた。
セントガルゴモンは、誘導ミサイルを自らジョーカモンの目の前で爆発させ、弾幕の目隠しを作っている。
そしてその目隠しを破るのは、錫杖を振り翳す陰陽師だ。

「ぬ…!!」
「はっ!!」

サクヤモンは、錫杖を突き出してくる。
接近戦をするには、少々スタンドプレーが過ぎるぞ…そう思いグレイソードを突き出すが、再び彼は驚かされた。
グレイソードはサクヤモンの腿を削った…だが、サクヤモンの速度は落ちない。
…借り物の刃での攻撃くらい、なんてことはない…。
そして彼女は錫杖を大きく振り翳す。

「金剛界曼蛇羅!!」

巨大な結界が発動し、ジョーカモンを覆った。

「ぐぁ…」

この戦いで初めてまともに必殺技を喰らったジョーカモンは、そのまま弾かれた。
おのれ…ジョーカモンは歯噛みした。
彼らは初めから攻撃を避ける気などないのだ。
ならば望み通り、剣の一突きで貫いてやろう…再び飛び込んだが、間に入った影に攻撃を封じられた。
グレイソードを受けているのは…グレイソードだ。
本物のグレイソードだ。

「あのまま倒れていると思ったか?」

埃に塗れた聖騎士が言う。

「…そう思っていたが…」
「それなら、お前はこの場にいる全員を舐めていたことになるな」
「なん──!!」

ジョーカモンは意味を成す言葉を叫ぶ前に、本物のガルルキャノンと顔を合わせることになった。
至近距離で青白いフラッシュが目の前に広がり、再び吹っ飛ばされる。
そして再び歯噛みをする…奴も、自分を犠牲にする輩か!





「これは?」
「『竜の目の湖周辺のデジマス釣りガイド』とあります」
「これは!?」
「『あなたにも出来る!スーパースターモンの成功学』です」
「これは!?」
「『誘惑ロゼモンのいけない夜』…」
「削除―ッ!!」

素早くコンソールの削除キー(どういう訳か、これが一番最初に分かったキーである)でファイルを削除する。
「あっ…」という、博和の残念そうな声が後ろから聞こえたが、鋭い目つきで制した。

「あーもう!何でこんなにいらないプログラムばっかりなのよ!?大体釣りだの成功学だのエロ画像だの関係ないモノ多過ぎでしょ!?中年のオッサンかっつーの!!」
「京さん、抑えて下さい!今は時間が無いんですよ!?」
「分かってるわよ!!」

伊織の言葉に京が苛立たしげに返すのも無理は無い。
確かに、この制御コンピュータに入っているプログラムの数は膨大だった。
とても一つ一つを調べている時間はない。
京達はそれらしいプログラムを見つけては調べるが、その度に当ては外れていく。

だが、文字列を見ているのは彼女一人ではなく、子供達全員だ。

ふいに、丈の目に一つのデータが留まった。
それは他とは違う、赤いデジモン文字で表示されている…。

「それはどうだい、アクィラモン!」
「あっ…それです!!『解凍プログラム』、間違いありません!!」
「丈さん、凄ぇ!!たまにはやりますね!!」
「…うん、まぁ…褒め言葉だよね、博和君?」
「光子郎君、見つけた!!」

ミミはすぐに反応し、それを光子郎に告げた…すぐに答えは戻ってきた。

“すぐに解凍して下さい!全てを!”

プログラムを起動する。
そこには七つの文字列があった──全てを読まずとも、それが何を表しているのかは分かりきっている──が、そのうち五つはグレーで色分けされていた。
残る二つの文字列…『解凍可能』。
京は会心の笑みを浮かべた。

「ビンゴ!!」





賢と大輔は戦いを見ている。
ここまで、怒りに駆られて戦ってきた…今になって、そんな轍を踏むなんて思っていなかった。
自分も、仲間も、今まで繰り返した間違い。
それでも、戦っている。
それは個人的な衝動ではなく…背にあるものが動かしている。

大輔は、掌を見て、それを固く握った。
そして改めて、自分に問うた。
何のために壊していた?何のために戦う?



おかしい。ジョーカモンは思った。
ここまで全てを優位に進めてきたのだ。
一度は勝利した。その筈だ。
にも関わらず、あと一歩という所で…彼らは粘る。
その上、全て倒したと思っていた究極体がまだいるとは…。
そして空気は悪い方に流れている。
あと一歩が…。

ふいに、後方から音が響いた。
それは彼の上、氷像から聞こえる。
ジュウ…という、温かみのある音。
それと、ひやりとした冷気と共に、白い煙が流れてくる…。

そして何が行われていたのかを瞬時に理解した。
…おのれ!!

ジョーカモンは即座に反転し、腕を元に戻すと、再び手元に現れた巨大な両刃の鎌を一気に投げた。
回転しながら、両刃の刃は、白煙の中に飛び込もうとする。
だが、その一寸前で、その鎌は弾かれた。
槍に。

荒い息を弾ませる、紅蓮の騎士に。
今までに無い鋭い目を彼に向ける、デュークモンに。

「甘い」
「…!!」

次の瞬間、デュークモンのすぐ横から、極太のレーザーが放たれた。
インペリアルドラモンとよく似たレーザー。見覚えのあるレーザーが。

それはジョーカモンのローブを僅かに焼いた。

「…」

ジョーカモンは既に、驚きを内側にしまい込んでいた。
そしてもう一度、考えた。
当然ながら、まだ記憶の削除は行っていない。
そもそも、インペリアルドラモンを、そして子供達を堕とすためなら、凍結された“息子”などどうでもよかった。
そしてバックアップチップに残っている“死者の記憶”は、彼の造ったプログラムに忠実に、オリジナルのデジモンに引き継がれている。
目の前にいる個体に。

「気を落とすことはない」

白煙の中から、彼は言った。
彼が最初に気遣ったのは、彼と戦った“仲間”だった。

「私達は敵だった。そして戦いとは常に、殺すことを迫られる。君達も、私達も、それは変わらない。君達は正解のない過酷な選択を迫られていた」

それまで停止していたインペリアルドラモンの目が再び開いたのは、大輔が彼の姿を確認した時だった。
大輔は立った。彼らを見た。
二つの白煙に塗れた存在は、身体を僅かに動かしている。
生きている。

「あ〜ら…やだわぁ、これ。全身ずぶ濡れになるんだもの。動きにくいったらありゃしない…」

ブラックインペリアルドラモンよりも小さい影は、首と指の骨を鳴らしながら喋っている。

「ま、いいわぁ…濡れ濡れ、ってシチュも萌えるしィ…何より、生きてまた愉しめるものねぇ…色んなコトを」

巨大な影は、遂に白煙からのそりと姿を現した。
黒色の身体から独特の力を放ち、ブレードを光らせる。
赤の瞳はジョーカモンを見つめている。

「私達は常に戦ってきた。殺してきた。それは私も、私の兄弟達も変わらない。罪の重さは貴様と変わらないだろう。だが…」

しかしその赤の瞳は、いつもの輝きとは違った。
ジョーカモンでさえ、その輝きは今まで見たことが無かった。
炎の如く輝いている、力。

「兄弟の命を弄び、捨てた貴様を…私は許さない」
「…何を言っている…今更そんなことを…」
「許さんぞ!!ジョーカモン!!」

激しい叫びが、大気を振るわせた。
ジョーカモンはそれに、今まで感じていた苛立ちよりも不気味な感情を抱いた。
恐怖を。

馬鹿な…。



次に空気中に伝わったのは、ゴン、という音だった。
それは大輔の拳が、大輔の額に当たった音だった。

「も、本宮…?」

大輔は賢の不安そうな言葉に、ニヤリと笑いを返した。
本宮大輔は復活した、と。
そしてインペリアルドラモンに言った。

「用意はいいか?」

インペリアルドラモンは返した。

「あぁ」
「賢、インペリアルドラモン…勝ちにいくぞ!!」

自分は間違った。
それを背負うことにした。
背負った上で、戦うことにした。



ジョーカモンは周りを見渡した。
そして、自分を囲んでいるものが全て敵であることを確認した。
最初よりも多くなっている。
包囲されている。
劣勢に回った。


デュークモンが一歩、前に出て、槍を仮面の悪魔に向けた。
そして元凶を囲む、全ての者の心境を代弁した。

「…ジョーカモン」

ジョーカモンの眼はデュークモンの眼を見た。
そうだ、人の話は目を見て聞くものだ。
しっかりと心に焼き付けるために。

「これで終わりだ」


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