時空を超えた戦い - Evo.17
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「…ん…」

健太が目を開けると、ぼやけた景色が網膜に映りこむ。
ここは…そうか、デジタル空間の通路。
但し、先ほど進んでいた通路とは別の…ちょうど、たった今襲撃を受けた地点の真下に当たる位置だ。

あれほど巨大なデータの流砂に巻き込まれたのだから、一時はどうなるかと思っていたが…衝撃はデータの屑が吸収し、
無傷で到着できた様である。

「あ…メガネは…」

視界が何時まで経ってもぼやけている…と思っていたら、自分の眼鏡が外れていたことに気づいた。
しまった、今の流砂の中で外れてしまったのか…?

「ぴぴい〜っ!」

その時、ピンク色の小さな物体が自分に抱きついてきた。
姿はぼやけているが、それは紛れも無い、唯一無二のパートナーデジモン。

「ま、マリンエンジェモン…?」
「ぷぴぃ!」

マリンエンジェモンが、目の前に奇妙な形の、しかし見覚えのある物を取り出した。
細長い蔓に、二つの横並びのレンズ…。

「…あ、メガネ…ありがとう、マリンエンジェモン」
「ぴぴぃ〜っ!」

マリンエンジェモンから眼鏡を受け取り、掛けようとした時、ドンという鈍い音が辺りに響く。
驚き、眼鏡を掛けると、最初に見えたのは、通路の壁に拳を打ちつけた大輔の姿。


「…くそっ…」


苦渋の表情で、何も無い壁を睨みつける。

「ダイスケ…」
「何だってんだよ…あの野郎…」

すぐに、キングエテモンの事を言っていると気づいた。
犠牲だけは出したくなかった。
自分が既に、多くの人々に迷惑を掛けてしまった、それなのに…。

「あれじゃあ…意味ねぇじゃねぇか…」


沈黙が続いた。



「…おい、落ち着け…」


最初に口を開き…大輔に近づいたのは、博和だった。


「…何だよ」
「アイツは…俺達を助けてくれたんだぞ」
「…だから何なんだよ。俺達をココに逃がしたことか?」
「そうだよ。それ以外ねぇだろ」
「…助けた、だと…!」

大輔の中で、それまで抑えていたものが爆発した。
突然、博和に掴み掛かり、声を荒げる。

「あれで助けたことになるってか!?あそこで俺達が戦ってりゃ、アイツが死ぬ必要も無かった!それどころか勝てたかも知れねえ!
なのに…こんなことをして…みすみす死ぬなんて…」
「アイツの話を聞いてなかったのかよ、テメェは!ヤツらはクローンなんだ!何度死のうが、元が残ってりゃ意味がねぇ!
あそこで戦っても犬死にになるって、お前には分かんねぇのかよ!」

博和も大輔に対して怒りを露わにしていた。

「んなコト…分かってる!だからって…」
「止めろ!」

二人の口論を止めたのは健良だった。
普段の温厚な声ではなく、鋭い一括で。


シンと静まり返った中で、健良は小さく息を吐き落ち着きを取り戻す。

「…ごめん…。でも、今、ここで争ってる暇なんか無いのは分かっているだろう?
今はキングエテモンが残してくれた道筋を進むしかない…違うかい?」
「…」
「…そうだ…な…」


大輔が手を放す。


健良はもう一度、ただ一本伸びる筒状の通路を見た。
造りは上層と殆ど同じなのに、下層だからだろうか、少しばかり薄暗く、先が見えない。

「…この先に…進まなきゃ…」





「…通達だすわぁ。大至急戻れ、との主のご命令だす」

不快な、肥満した声でパロットモンが告げる。

「だ、そうだが…さっさと戻ろうぜぇ、シャハハ!あんな雑魚を相手にしてもちっとも楽しめなかったしよぉ!」
「…そうだな…しかし、主も気紛れだ。まさかあの子供らを『誘導しろ』とは、な…」

本来なら、排除指令が出ているうちに自分が始末して置きたかった…そう言いたげなデスモンに対し、オオクワモンは楽観的だ。
彼はデスモンとは考え方が根本的に違う。
細かい事など考えることは彼にはない。
オオクワモンにとっては、破壊すること──そして、標的を切り刻むことが出来ればそれで良いのだ。

「しかし、大丈夫かスらねぇ…まさかキングエテモンにウラをかかれるとは、思ってなかったわぁ…」

パロットモンが呟くと、それに合わせるかのようなタイミングで、三体の耳に不気味な声が響く。

『ブレイズ7…N‐4,5,6、聞こえるか』
「「「はい、閣下」」」

彼らの主の声である。

『N-7の処理、ご苦労…我らが友人達と会うのも遠い先の話では無いであろう』
「と、言う事は…閣下が直々に…彼らの相手を?」

デスモンが思わず問い掛けた。
主は僅かに、鼻で笑うような声を上げると。

『案ずるな…お前達にも出番はある。余計な考えなど持たず…今は儂に全て任せよ』
「は…申し訳ありません、閣下」

デスモンにとっては、自らの恨みをここで晴らして置きたい所であったが、出過ぎた行動は返って自らの立場を危うくしかねない。
デスモンはこの事実を十分に理解していた。
だからこそ、彼はブレイズ7の中でも最も忠実な主の部下として生き、主の信頼を得たのだ。
戦うことしか考えないN-1や、深い思慮の只中にいることを好むN-2とは違う。
しかし、彼は主の操り人形ではない。
従うのは、悪魔で彼が高みへと辿りつく為の手段だ。

「しかし…N-7は抜け道を持っていました。奴は…」
『浅はかだな…奴の考える事は直線的でコントロールなど容易い。だからこそ儂は奴をブレイズ7としたのだ』
「…と、言う事は…既に手を…」
『N-1、N-2、N-3をそれぞれ、逃げ道となりうる通路へ配置した。今の子供達の場所を考えると…N-3が捕縛することになろう』

キングエテモンの行動は、彼が敗北した時点で主に読まれていた。
その上で主は、彼らの「案内役」として、ブレイズ7の三体を配備していたのだ。

デスモンの頭に再び疑念が過った。
「案内役」である以上、彼らが子供達を傷つけることは無いはずだ──だが、あのN-3が彼らの相手をするとなると…。
N-3は、彼の毛嫌いするN-2以上に何を考えているのか分からない危険な存在である。
"勢い余って"子供達を抹殺することすら考えられるのだ。
主もその可能性を理解しているはずである。だが、そのリスクを負うとは…。

『お前達も我が元へ戻るが良い。宴の準備をせねばならぬ…』
「…了解…」


通信は途切れた。





啓人達は固まって通路を進んだ。
いつ、どこから襲撃が訪れるとも分からない。
まずは、近くに居るはずの彼らの仲間──そして、信頼の置けるあの先輩達と合流しなければ。

「それにしても…」

賢が辺りを見渡しながら呟いた。
嫌な予感がする。

「…あまりにも静か過ぎる…」
「…確かに、敵地の真っ只中でこんなに静かっていうのも…」

京も同意を示す。
この層に落ちてから、敵デジモンには一度も会わない。
いくら逃げ道と言えど、結局この通路は正規のルートに続いているはずである。
にも関わらず、ここまで手薄であることがあり得るのだろうか?

「…今はそんな事、関係ねぇよ…進まなきゃ意味が無ぇんだから」
「あっ、大輔…」

大輔は構わず、彼らより先に通路を進んでいく。
それにつられ、ブイモンも一足先に──。

「おい、待──」


緩やかな角を曲がった時だった。

「!!」
「う、わ…」

叫ぶに叫べない二人。
そして、代わりに響く、大量の咆哮。

「シャアアァァァ!!」



「!今のは…」
「大輔…ブイモン!」
「あんの馬鹿ッ!」

急ぎ通路を曲がると…案の定、そこは待ち伏せしていた敵で埋め尽くされている。
焦り顔の愛すべき友人が叫んだ。

「や…やべぇぞ!数が多過ぎる!」

エクスブイモンが懸命にデジモン達を抑えている物の、数はこれまでを遥かに上回っている。
さっきまでのシリアスな雰囲気はどうした、そんなツッコミの衝動をぐっと押さえ、啓人達も急いで戦いに参じた。



【EVOLUTION_】
ギルモン進化!
テリアモン進化!
レナモン進化!


ディーアークの光に呼応し、データの書き換えが起こる彼らの体。


グラウモン!!
ガルゴモン!!
キュウビモン!!



ホークモン進化!
ワームモン進化!


同時に、D-3の輝きが京と賢のパートナーを進化させる。

アクィラモン!!
スティングモン!!


10体のパートナーデジモンが迫り来る敵と激突した。

「があぁぁっ!!」
「シャァァァ!!」

しかし、グラウモン達が加わっても、敵の数は優に3倍はいるのではないか。
戦場と化したデジタル通路には、絶え間なく爆音が響く。


「くっ…」
「シャアァァ!!」

グラウモンが2、3体の敵を弾き飛ばした直後、彼に飛び掛ってきたのは、4つの真紅の瞳を持つ悪魔竜であった。
瞳と同じ色の爪を肘のブレードで受け止め、力比べとなる。

「…負けるかっ!」
「シャアッ!!」
「グラウ…」

啓人が指示を出そうと声を出した、刹那。


"キキキッ…"


刺すような視線。
凍る背筋。

「…っ!!?」

額の汗は気のせいではない。
何か、凶暴な殺意が、自分達を狙っている──!?

これに気づいたのは彼だけではない。
グラウモンも、他のテイマーも、対峙しているデビドラモンさえも。

「避けるんだ、グラウモン!!」

グラウモンは啓人の声とほぼ同時に横へ飛んだ。
だが──眼前の敵に気を取られ、反応に一瞬遅れたデビドラモンは、その凶弾に容赦なく体を貫かれた。

悲鳴を上げながら消滅するデビドラモン。

「!!」

何がグラウモンを狙ったのか。

その正体は、デビドラモンの最期を見ておずおずと下がる敵デジモンの隙間から分かった。
ゆらりと、海月の足のようにしなやかに動く腕。
その先には鋭利な爪があり、腕を支える胴体はヒョロリと細長い。
顔もまた異形であり、不気味な笑みを浮かべ──。



「アーァ…外レチャッタ」



その顔は1年前に見たことがある。
特に、大輔、賢、京の脳裏には強く焼きついていた。
どうして忘れられようか、あの悪魔を。



「マ、イイカ…げーむハ簡単ニくりあデキチャツマラナイヨネ」
「…ディ…」

──ディアボロモン。
邪悪な笑みを浮かべた敵の仕掛けたゲームへと、彼らは足を踏み入れてしまった。





同時刻、別の部屋。
殺風景な空間に『立ち入り禁止』という意味を成さない標識が浮かんでいる。
そこに佇むのは、数時間前にデスモンと会話していたデジモン。

「成程…彼らはディアボロモンの所へ…」

ブレイズ7、N-2のコードネームを持つ、黒色の巨竜は通達を受けて小さく溜め息をつく。
一度、主へと反抗を試みている子供達と、そのパートナーデジモンを見ておきたかったのだが…。
ディアボロモンが誘導を上手くするのか…甚だ疑問だが、今はそんな事を気にしても仕方がない。
目的は無と化した以上、今彼がすべきことは、主の下へ戻り、迫る戦いの準備をする事である。

彼が振り返り、持ち場から去ろうとした時、彼の背に巨大な影が出現した。
直後、巨大な影は鉄製の腕を振り下ろす。

「!」

激しい音が響き渡ったが、そこにはデータ片の砕けた痕があるのみ。
巨竜は気づくと同時、後ろへと下がっていたのだ。

巨大な影の持ち主──巨竜とほぼ同じ背丈で、真っ赤な全身が兵器の塊と言ってもいい姿──は僅かに笑うと、
更に巨竜に追い討ちを仕掛けた。
今度は形の違う両腕の爪で激しいラッシュをかける。
並のデジモンなら、一瞬で全身を切り刻まれるであろう攻撃。

しかし、黒の巨竜は驚くべき反射神経を用い、全てを前足の甲のブレードで弾いていく。
それを見た真紅の機械型デジモンは、笑いを上げながら更に攻撃を強めた。
巨竜は自分からは決して攻撃を仕掛けず、いなすことしかしない。
やがて機械型デジモンが攻撃を止めると、巨竜の方は瞬時に飛び退き、距離を取った。
そして、静かな、しかし苛立ちを込めた口調で言葉を放つ。

「下らない真似をするな…カオスドラモン」

その言葉を聞いた機械型デジモンは、またも一声大きく笑いを上げ、返事をする。

「グハハハハ!何、相手をディアボロモンに取られたからなぁ。せめて一度、こうして腕を揮っておかねば気が済まん」
「だからと言って…主が貴様の行動に気づけば、ただでは済まされん。違うか?」

巨竜が機械デジモンに警鐘をならすかの様に問うが、彼は尚も笑いを止めず、言葉を返した。

「グハハ…それは貴様のことではないのか?随分と行動が浮いているからな…主は貴様の動きを監視しているぞ?」
「私は大して気にしてなどいない」
「そうか…だが気をつけた方がいいだろうよ。創造主を舐めない方がいいぞ、N-2…ブラックインペリアルドラモン」

黒色の巨竜…ブラックインペリアルドラモンは動じなかった。
他愛も無い会話…彼にとっては楽しい物なのかも知れないが、黒の巨竜にしてみれば付き合うだけ意味の無い物だ。
再び溜め息を付き、この会話を終わらせると。

「…ともかく、戻るとしよう。ここに居ようとも、お前の好きな戦いが出来る訳でもない」
「グハハハ…確かにその通りだ」

ブレイズ7、N-1…7体のクローンデジモンの中でも最初に生み出された紅蓮の機械竜、カオスドラモンは、笑いを再び浮かべる。
急がずとも、戦いの方から自らへと進んでやってくる。
早く味わいたいものだ。
あの血を、あの消滅音を、あの死を。

「…果たして、この戦いは何処へ行くのだろうか…」
「…考えるだけ無駄だろうよ。ワシは戦いが愉しめればそれで良い…他は主が考えれば良い事だ」

巨大な翼を広げ、N-2・ブラックインペリアルドラモンは飛び立つ。
だが移動しながらも、彼の思慮はまた深い所へと移っていた。





多くの敵が下がると、入れ替わりに信じられない速度でディアボロモンが飛び込んでくる。
グラウモン達の眼前へと降りると、関節が存在しないような動きで腕を一気に伸ばしてきた。

「くっ…!」

間一髪、鋭利な爪の一撃を避けるグラウモン。
目標を失った先端は壁へと突き刺さる。

「キキッ…」

このタイミングを逃す訳にはいかない。

「「おおぉぉぉっ!!」」

エクスブイモンとスティングモンが同時にディアボロモンへと向かったが、
次の瞬間、待機していたデジモン達の集中砲火を受けてしまう。
それをカバーすべくグラウモンも再び突撃するが、今度はディアボロモンのエネルギー弾の連射が待っていた。

「ぐっ…」

グラウモンと、彼の後方にいたガードロモンが弾き飛ばされる。
例え動きが制限されていようが、ディアボロモンの攻撃方法はまだ無数にあるのだ。

「キキキ…」

筒状の壁から腕を引き抜き、狂気の笑みを浮かべる。
動きが止められた今、腕の狙撃を受ければお終いだ。

「グラウモン!」
「う…」
「キキキキキィッ!!」

両腕の爪が伸び、グラウモン達を襲う。


「!!」



だが。

響いたのは斬撃の音ではなく、金属音。
それも、何かが受け止められたような。


「…え…」


傷は受けていない。
痛みも全く無い。


何が起こったのか──それは、正面に突如として現れた、黄色い姿を見て理解出来た。
それを見た大輔が「あ…」と呟く。

「よぅ、遅いじゃないか、大輔」
「…た…」

だが、大輔よりも先にディアボロモンが声を上げた。

「オマエハ…誰ダ?」
「…そうか、前の奴とはやっぱり別物か…」

ディアボロモンの爪は、その竜人が両手に構えた、太陽の様な紋章を描く盾によって防がれていた。


更に別の場所から、一声叫び声が聞こえた。
それと同時に感じる、冷気。

「コキュートスブレスッ!!」

薄い青の光線がディアボロモンへ放たれたと思うと、彼の足元が瞬時に凍りつく。
攻撃の主は…部屋の反対側からこちらへ向かってくる、全身機械で覆われた狼。
狼の背には、恐らく自分達よりも年齢が上であろう金髪の青年がいる。

「元気だったか、大輔?」
「や、ヤマトさん!」

だが、邂逅の暇を作ることなど簡単には出来ない。
動きが止められても、まだディアボロモンには伸縮自在の腕と必殺の光弾を持っている。

「キキキキィ!!」

ディアボロモンは突如として現れた二体の敵に対し、光弾を滅茶苦茶に撃ち始めた。
鎧を纏う竜人と、機械の狼は、その全ての攻撃を実に見事に回避していく。

「太一さんっ!気をつけてください!」
「いいから!お前らは走れ!」

竜人の背に乗る先輩に大輔は叫んだが、予想外の返答に一瞬止まってしまった。
走る?何処へ?

だが、更なる(やや苛々した雰囲気の)返答が、その有効な回答となった。

「こっちに抜け道がある!そこを通れ!逃げるんだ!!」

ディアボロモンの攻撃は止まないが、それでも二体のデジモンは上手く攻撃を誘導していた。
お陰で大輔達は自由に動く事が出来る。

このタイミングで走らなければ!

「わ、分かりました!!」

一斉に走り出す、大輔達。
太一が提示した方向には…確かに、小さいが抜け道が存在する。
恐らく太一達はここから自分達を発見してくれたのだろう。
危機的状況だっただけに、九死に一生を得た気分である。

「ダイスケッ!来てる!!」

エクスブイモンの叫びに上を見れば、まだ生き残っている敵デジモン達がこちらへと向かっていた。
逃がすまい、とばかりにそれぞれが咆哮を上げている。

「くそっ…」

やはり戦うしか、そう大輔と啓人が感じた瞬間、抜け道となる通路から、竜人よりも更に大きな影が出現した。
その影は大きな翼を広げ、高速で敵に向かっていく。

「あれは…」

京がその姿に思わず息を呑む。
久しぶりに見た…その巨大な姿を。

「シャドーウィング!!」

巨大な鳥人の叫びと共に、巨大な影がデジモン達を呑み込んだ。
最期の悲鳴と重なる、多くの消滅音。
その音が消えると同時、赤き鳥の背から──確認する時間など殆ど無かったが、確かにそこには少女の姿があった──声が聞こえた。

「皆、止まらないで!走って!!」
「空さん…」
「いくぞ、皆っ!」

一瞬立ち止まった京の腕を賢が引っ張る。
同じ様に、ディアボロモンの「ゲーム」に乱入した三体のデジモンに見惚れていた仲間に対して健良が叫び、我に帰らせた。

走る、走る。
部屋を抜け、一刻も早くディアボロモンから離れなければ──!





「素晴らしい…こうも上手く行くとは!」

ディアボロモン達の主が感嘆にも似た声を上げた。
彼の周りで、モニターに移る各地の現状を監視していたスカルサタモン達に、主は言った。

「準備を急がなければなるまい…役者は揃った。いよいよ始まるのだ…」


至高の宴が。

戦いが始まる…全ては、彼の手中にあった。
未だ子供達は、そのことに気づいていない。


INDEX 
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