人を騙すのはやめましょう
人を騙すのはやめましょう











「そこを退いてくれないか」

ブラックインペリアルドラモンは、目の前に並ぶ10体程のクリサリモンに告げる。
ふわりふわりと、海に浮かぶ海月のように触手を浮かせる姿は、同じような性質の“兄弟”を髣髴とさせる。
残念なことに──彼にとってのこの「残念」は、もしカオスドラモンなら「幸運」と言い換えるだろう──、クリサリモンはブラックインペリアルドラモンの言葉を無視し、一斉に襲い掛かった。
仕方ない。戦うとしよう。
無駄な戦い、特に生死に関わるものは好きではないが、彼らは生存競争のルールに従ってこちらに挑んできているのだ。
こちらもそのルールに乗るとしよう。

こういった、想定外の戦いの場合、彼は常に自分なりのルールに従う。
非戦闘員には手を出さない。逃げる者、戦意を喪失した者は追わない。
必要性がない限り、生命は奪わない。
そして…手を抜かず、必ず勝利する。


クリサリモンは全て、別々の軌道で飛び掛ってきた。
一体が6本、計60本の触手がブラックインペリアルドラモンに伸びる。
だが、最初の20本が、ブラックインペリアルドラモンの、頭の“在った場所”に向かった時、既にブラックインペリアルドラモンは団体の下に潜り込んでいた。
そしてクリサリモンの団体は、強烈な羽の一撃に迎えられた。
10体中6体がこの攻撃を見事に喰らい、岩山に激突して消滅した。
残りの4体は急旋回し、再度ブラックインペリアルドラモンに向かうが…正面からブラックインペリアルドラモンと向かい合うことは予測していなかった。

「スプレンダーブレード!」

振り下ろされる巨大なブレード。
硬い鎧の中にある目が、大きく見開かれ…次の瞬間には、切断された。
これで全てか…そう思ったが、どうやら一体だけは直撃を間逃れたらしい。
触手の数は2本に減っているが、本体は無傷のようだ。
ここまでの自分の成果を見て、このクリサリモンが退散してくれれば…そう考えたブラックインペリアルドラモンだったが、生憎彼はそのつもりが無いらしい。
触手が体に突き刺さる前に、刃の一撃を加えるつもりだったが…両者の動きが止まった。
空に浮かぶ両者の間に、二つの物体が落下していったからだ。
生き物…デジモンらしきものが。



時は6月、リアルワールドの「ニホン」という場所では雨がよく降る季節らしい。
デジタルワールドにも季節はある。
但し、その季節がどのエリアでも反映されている訳ではない。
要はリアルワールドと同じで、季節が気候に反映されるかどうかは、場所によって全く違うのだ。
だが、どんな季節だろうと、どんな場所だろうと、空から生物が落ちてくることは中々無い。
考えられるとすれば、地上から打ち落とされた鳥型のデジモンや、渓谷へと飛び降りた屈強なデジモン位だが…今回はどうやら、それらとも違うようだ。



どうしてそう言えるのかというと、地面に落下した二体のデジモンが、地上で立ち上がるや、大喧嘩を始めたからである。
片方は赤い体の爬虫類型らしきデジモン、もう片方はもう少し小柄で、白と薄い緑色の模様の体を持つ獣型デジモンだ。
どちらも体が小さく、成長期に見える。
それにどちらも、陸上型のデジモンだ。

「何すんだよー、ギルモン!二人とも落っこちちゃったじゃないかー!」
「ギルモン、何もしてない!テリアモンがゾーンに近づきたいって言ったからこうなったんだよ!」
「あ〜、どうするんだよ〜う。デジタルワールドに来ちゃったじゃん!どうやって戻るのさ!?」
「ギルモンだって知らないよ!」
「なに〜!」

そんな声が上空から聞こえた。その直後、殴る蹴るの大乱闘が発生していた。
まぁ、そうは言っても成長期である。
顔を抓り合ったり、頬を引っ叩いたりする程度で、命を争う戦闘には見えない。

だが、クリサリモンはその喧嘩に、“死”を持ち込むつもりらしい。

落下したデジモンを見た瞬間、本能なのか、突如として急降下していく。
…こちらとの戦闘を切り上げ、あの成長期のデジモンを殺すつもりだ…。
ブラックインペリアルドラモンは直感的に理解した。
傍目からも彼らは成長期で、所謂“弱いデジモン”の部類に入るのだろう。
こちらとの戦闘よりも、その弱いデジモンを殺してロードすることを優先したらしい。
しかも悪いことに、地上の二体はクリサリモンが迫ることに全く気づいていなかった。

「…待て!!」

次の瞬間には、ブラックインペリアルドラモンもクリサリモンを追い、急降下した。
あの成長期がどんな存在だろうが、自分との戦闘を切り上げ、奇襲によって戦意の無い弱者を殺すという対戦相手の行為を、ブラックインペリアルドラモンは許すことは出来なかった。
クリサリモンの残りの触手が広がった瞬間…ブラックインペリアルドラモンの頭部の角が、サナギの本体を弾き飛ばす。
回転しながら落下していくクリサリモンに照準を定めると、ブラックインペリアルドラモンの背中の砲塔が光った。

「ポジトロンレーザー!」

激しい光、音と共に放たれたレーザーは、クリサリモンの体を瞬時に蒸発させた。



ふぅ、と小さな溜め息をつくと、真下で二体の成長期が、唖然としてこちらを見ていることに気づいた。
今の大きな音と光は、彼らの激闘(喧嘩)を終わらせてしまったようだ。
こういう場面に出会うのは、実の所彼にとっては珍しいことではない。
彼のことを知らないデジモンが彼に出会う度、大概にしてそのデジモンは敵意を剥き出しにするか、深き森でグランディスクワガーモンに出会ったような表情をする。
今回のケースは紛れも無く後者。
さて、どうしたものか。

「だ、だだ、誰だお前―っ!」
「落ち着いてくれ。私はお前達を獲って食うつもりはない」

…この台詞も何度も言ってきたのだが、まともに聞いてくれたデジモンは数えるほどしかいない。
恐らく、逃げられるのが関の山…。

「そうだね、焦ってもしょうがないよね」
「だよねー」



…。



「…お、お前達…」
「ん?」
「私を見て何も思わないのか?」
「何が?」
「ご飯粒が口に付いてるとか?」
「そういう事では無くてだな…」

調子が狂う。
こんな質問をする必要もなかったのかも知れないが。

耳の長い方の成長期が、ついでとばかりにぼそりと呟く。

「だって、僕達イカツいデジモンとなんて、何回も戦ってるもんねぇ」



…。



「質問の意味、分かっているじゃないか」
「あれ、聞こえてた?」
「タカト達と旅した時、色んなデジモンに会ったしね〜」

赤い体の爬虫類デジモンも同調した。
と、ここで聞きなれない単語を耳にした。

「…タカト?」
「うん。ギルモンのテイマー」
「ギルモンもそうだけど、僕もテイマーがいるんだ。ジェンって言うの」

その言葉を聞いた瞬間、傍目から見ても、ブラックインペリアルドラモンは驚いていた。
ニンゲンをパートナーに持つデジモンと会うのは初めてではないが、まさかこの状況で出くわすとは。
しかし、それだと奇妙なことになる。

「…何故、お前達はここにいる?」
「あぁ!それなんだけどさー、ギルモンが…」
「違うよー!大体テリアモンが…」


それから約10分。
所々喧嘩が再開し掛けたり、双方の話が食い違うこともあったが…ブラックインペリアルドラモンはようやく状況が理解できた。
要約すれば、彼らは間違って出現したゾーンに近づき、リアルワールドから“落下してきた”らしい。

「そうか…それは難儀だったな」
「今だって難儀だよー」
「モータンマイ!」
「ギルモンがそれ言わないでよ!しかもまた間違ってるし…」

しかし、彼らのこの問題は実の所、さして重大ではなかった。
というのも、ブラックインペリアルドラモンはこの辺りの地理としての事情をよく知っていたのだ。

「二人共、それ程心配する必要はない」
「「なんで?」」
「元々、この辺りはリアルワールド球との繋がりが不安定でな…リアルワールドへと繋がるゾーンは、この場所では頻繁に出現するのだ。時間帯も大抵短い間隔で連続している。恐らく1時間程待てば、再びリアルワールドへ戻れる規模のゾーンが現れると思うが」
「でも、僕達あんな高くまで飛べないんだよ?」
「問題ない、私がゾーンまで送ってやろう」

本当に!?と、目を輝かせる二体のデジモンに、ブラックインペリアルドラモンは頷いてみせた。
まぁ、この程度の行動は主も許すだろう。
最も、余計な悪口を言われる可能性くらいはあるから、報告するつもりも無いが。

「その代わり…と言っては難だが」
「…?」
「お前達はどうやってリアルワールドへ?」
「…え?」
「いや、どうもお前達は力を求めてリアルワールドへ赴くようなタイプのデジモンには見えないからな。何か他に理由があるのか?」

興味本位で聞いた質問。
まさかそれが、後にとんでもない出来事を起こすとは露知らず。

うーん…と唸った後、ギルモンはありのまま、そのままに伝えることにした。

「何って言うか…ギルモン、ココで生まれたわけじゃないもん」
「…どういうことだ?」
「ギルモン、タカトがつくったデジモンだもん」


「…!!」



ブラックインペリアルドラモンにとっては衝撃的な一言。
ニンゲンが「つくった」!?
まさか、そんな事が起こり得るのか?
確かに生物というものは突然変異によって進化する存在だ。
だが、だからといってニンゲンからデジモンという、全く遺伝情報の違う存在が生まれるなどということがあるのか?
そう言えば…デジモンと違い、ニンゲンは雌雄別姓であり、二体以上の個体が存在しなければ新たな個体は誕生しないという。
タカトというニンゲンに、別の生物の遺伝情報が混ざった、ということなのか?
いや、しかし…。



「えぇっとね、僕はジェンのパソコンゲームから…」

テリアモンは自分のことを話そうとした所で、相手の異変に気づいた。
イカつい体つきには実に似合わない表情でボーッとしている、目の前の竜。
…何してんの?

小さい呟きが、テリアモンの耳の中に入った。

「信じられん…父親なのか?母親なのか?…」



???



一瞬、彼が何に悩んでいるのか全く分からなかったが…こういった状況でのテリアモンは頭の回転が非常に速い。
成る程、彼は勘違いしてるワケですか…。
この瞬間、テリアモンに悪戯心が生まれた。

「…えー、ゴホン。ところで君はリアルワールドは好きかね?

突然、高圧的な態度に出るテリアモン。

「??…好きと言うか…」
「それならこのテリアモン博士が、ナウでヤングなリアルワールド情報を教えて進ぜよう〜」

『ナウでヤングな』という言葉自体がそもそもナウでヤングなのか甚だ疑問だが、これに食いついたのはブラックインペリアルドラモンである。

「それはありがたい。是非ともお聞かせ願おう」

冗談半分なのか、本気なのか。
いずれにせよ、彼は疑いを持つ様子が微塵も無い。

「よろしい!えーっとね、どこだっけ…」

その言葉に気を良くした(?)テリアモンは、デジタルワールドへ落下した時に落としたリュックサックを拾い上げ、その中に入っている何かを探り始めた。

やがて、下準備を終えたテリアモンが振り向くと。

「どうも〜、ハードゲイでーす!」



時が止まった。



「…テリアモン、それ、レイザー●モンHGじゃ…むぐぐっ!?」

珍しくツッコミに回ろうとしたギルモンの発言は、空しくもサングラスを掛けたテリアモンに口を塞がれて中断させられる。

「リアルワールドでこれをやれば絶対、人気者になれるよ〜!他にも『フォー!』とか『セイセイセイ』とか『バッチコ〜イ!』とか…」

「人気者になれる」という部分はあながち嘘ではないのだが、明らかに間違った方向へブラックインペリアルドラモンを誘おうとするテリアモン。
そしてそれに全く疑いを抱かず、あくまで真剣に聞き入る黒竜。
しかしギルモンは元ネタには気づいたものの、それを教えることでどういう結果が導き出されるかまでは気づいていない。
ストッパーとなる存在もいない、見事な状態が生まれていた。



「…キリリク小説フォー!…はい、繰り返して!」
「…キリリク小説ふぉー?…」
「ちょっとー。声が小さいよー!思いっきり言わないと!」
「キリリク小説フォー!!」
「良し!モーマンタイ!流石僕の弟子(パダワン)だ!次行くよー…」
「…ギルモン、お腹空いたなぁ…」



数十分後。



「免許皆伝だ…僕から教えることはもう何もないよ」
オッケ〜〜イ!!
「…テリアモン、何だか最初と全く性格が変わってる気がするんだけど」
セイセイセイセイ!!それは言わない約束ですよフォー!!」
「ブラックインペリアルドラモン、君の友達にもこういうギャグわかる奴いないの〜?」
そんな奴おらへんやろ〜。ちっちきちー!
「大丈夫なのかな〜…ん?」

ふと、ギルモンが頭上を見る。
再び客が現れた。と言っても、今度はクリサリモンのような戦いを申し込む存在ではない。

「こんな所に居たのか、ブラックインペリアルドラモンよ」

またしても登場した「いかつい」デジモン。
今度は全身が赤色、如何にもマシーン、といった形のデジモンだ。
無論、それはブラックインペリアルドラモンの“兄弟”、カオスドラモン。
彼もまた任務を終え、ブラックインペリアルドラモンに合流する所であった。

「こんな所で何を…」
「カオスドラモンがわーわー言うとりますけれども。はい、ジャンガジャンガジャンガジャンガ〜
「…何を言っているのだ、ブラックインペリアルドラモン…」
お前に食わせるタンメンはネェ!!
「おい、どうした?何をやっていr」
ミュージック、スタート!!

“暴走”するブラックインペリアルドラモンは全く聞く耳を持たない。
更に、ブラックインペリアルドラモンの叫びと同時に聞こえてきた音楽は「NIGHT OF FIRE」…。
言うまでも無くやっているのは小力パラパラである。

「〜!」



…。



唖然となるカオスドラモン。
何だ!?何が起こった!?
遂に狂ったか!?


だが、その疑問は、横でブラックインペリアルドラモンの様子を見て馬鹿ウケしている、二体の成長期を見て理解できた。
地面を叩きながら腹を押さえている獣型と爬虫類型のデジモン…。
ブラックインペリアルドラモンが生真面目なのは認めるが、それが災いして(あらゆる意味で)騙されやすいことは、ブレイズ7の誰もが知っていたのだ。

「おい、ブラックインペリアルドラモン!貴様、今度は何を刷り込まれた!?その変な踊りを止めろ!!」
しゃあ!この野郎!俺をキレさせたら大したもんだ!!



「…」


この瞬間、カオスドラモンの中で何かが大きな音を立てて千切れた。



目を覚まさんかこのクソがぁぁぁ!!



ガン!!


強烈な打撃が、ブラックインペリアルドラモンにヒットした。
荒い息をつくカオスドラモンと、バタリと倒れる黒の皇帝竜。

が、普段の自己鍛錬の成果か…倒れたのはほんの一瞬で、すぐにブラックインペリアルドラモンは気を取り戻した。

「…む…??私は今まで何をしていたのだ?」
「…起きたか。うむ、絶妙の位置にヒットしたようだな」
「カオスドラモンか?どうした?…確か私は…そうだ、あの成長期達の相手をしていて、それから…」
「よく分からんが、それ以上は思い出さなくて結構」

そう言いながら、カオスドラモンとブラックインペリアルドラモンは、未だに笑い転げている二体の成長期を見た。
というか、あれだけ大きな音がしても気づかなかったのか、コイツら…。

「はぁー、はぁー…ん?何だろ、あれ」

ようやく起き上がったテリアモンだが、ふいに何かに気づく。

「ねぇ、アレ何?」
「「?」」

テリアモンの指し示す方向に、カオスドラモンとブラックインペリアルドラモンも目をやる。
ブラックインペリアルドラモンの後方に雲のような灰色の塊が現れ、光り輝いている…。
それを見てようやく、ブラックインペリアルドラモンは本来の目的を思い出した。

「…あぁ、あれがゾーンだ。あそこからリアルワールドに戻れる。ここに落下したのなら、恐らく戻る場所の座標も同じだろう」
「本当!?」
「わ〜い、タカトの家に戻れる〜」

両手を挙げて喜ぶ二体の成長期。
その会話を聞き、顔をしかめるのはカオスドラモンだ。
小声でブラックインペリアルドラモンに問いかける。

「…貴様、また厄介事を請け負ったのか?」
「そうだが。この位は問題無いだろう?」
「…まぁ、そうだが…お人好しというか何というか…」

苦い表情を浮かべるカオスドラモン。
彼が言えた義理かどうかはともかく、この行動はブレイズ7の一員として取るべき行動かどうか怪しい。
その表情を横目に見たブラックインペリアルドラモンは小さく言った。

「…まさか、あの小さなデジモン達とまで戦いたいとでも言うのか?」
「下らん…オオクワモンと一緒にするな。あんな歯ごたえの無さそうな奴ら…こちらから願い下げだ」

この後、彼はこの二体の成長期の内一体と戦うことになるのだが、それは別の話である。

「…まぁいい、勝手にしろ。ワシは帰るぞ」

吐き捨てるように言うと、カオスドラモンはその場を去っていく。
僅かに後ろを振り向いた後、ブラックインペリアルドラモンは二体の成長期へ言った。

「さて…お前達をあちらの世界へ還すとしよう。しばしのお別れだ」
「あ〜、とっても楽しかった!また会えるといいね〜」

ギルモンが無邪気な表情でそう言うと、ブラックインペリアルドラモンの表情も緩んだ。
…全くその通りだ。
叶うならば、自分は今とは違う、別の存在として。
だが、それは到底叶わない話である。


「さて、行くとするか…」


それだけ言い、ゾーンを指し示すと、ギルモンとテリアモンもそちら側へ向かおうと歩き始めた。
だが、この時、ブラックインペリアルドラモンは重大な事実に気づく。

自分の姿、そしてカオスドラモンの姿を見たデジモンがリアルワールドへ行く?
その情報がニンゲンに知れ渡る?

カオスドラモンはそこまで気が回らなかったのかも知れない。
或いはリアルワールドへ帰還するデジモン、だとは考えなかったのかも知れない。
しかし、それは“組織の一員としての彼”は、絶対に阻止しなければならないことだった。
だが、阻止、という言葉の意味する所は…。
ブラックインペリアルドラモンは悩んだ。だが、やらなければならないことは決まっていた。
ここで彼は“ブレイズ7・N-2”に戻らざるを得なかった。

すまない。


そして、ブラックインペリアルドラモンは小さく問いかけた。



「二人とも」
「「?」」



次の瞬間、ブラックインペリアルドラモンの右腕が大きく上がり…振り落とされる。
そこで、ギルモンとテリアモンの意識は途切れた。





「ギルモン!ギルモン!どうしたの!?」
「テリアモン!返事をするんだ!」

啓人と健良は、中央公園に倒れていた二体を見つけ、唖然となってそれぞれのパートナーを揺さぶっていた。
夕方になっても彼らを心配し、探すこと二時間…ようやく発見したかと思えば、二体は意識を失っている。
理解し難いことだが、それよりも彼らが無事なのか気になった。

「…う、う〜ん…」
「…ん〜?」
「ギルモン?起きたの、ギルモン!?」
「テリアモン!?」

ほぼ同時に、むくりと起き上がる二体の成長期。
安堵した啓人と健良だったが…次の瞬間、二体が喋りだした言葉を聞いて、別の衝撃を受けることになる。



どうも〜、ハードゲイで〜す!!ココは何処フォー!!
キレてないですよ。俺は誰だこの野郎!



「「…」」




後日談。

二体の成長期が本来の状態に戻ったのはそれから約一週間後。
だが、幸運なことに、デジタルワールドへ行ったこと、ブラックインペリアルドラモンに出会ったことは遂に思い出さなかった。
ブラックインペリアルドラモンは二体の成長期の頭を打ったことを反省し、自らの頭も壁に打ち付けた。
カオスドラモンはこの時に見てしまったブラックインペリアルドラモンの奇行を憂い、自らこの日のメモリー・ワイプを行ったという。


そして、二ヵ月後、彼らは今回と全く違う立場で再会する。


INDEX
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